先週、タンザニアで2億4000万年前の地層から「アジリサウルス・コングウェ」と名付けられた爬虫類の化石が見つかったというニュースが流れた。そこで私の目を引いたのは、この発見が恐竜の起源を1000万年以上遡る可能性につながる、ということではなく、その頃は地球上の大陸のほとんどが「パンゲア」というひとつの超大陸だった、という説明である。
パンゲア。ギリシャ語で「すべての陸地」という意味。地球上の全ての陸生生物が、動物も植物も自由に行き来できていた、その広大な大陸。私が思い浮かべたのは、村上春樹の図書館だった。 村上春樹ファンならご存知と思うが、彼の小説では図書館が大切な役割を果たすことがままある。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」では、「世界の終わり」に送りこまれた主人公が、ユニコーンの骨ばかりが並んだ図書館で「夢読み」の仕事をあてがわれる。「海辺のカフカ」では、主人公が偶然に導かれて四国の私設図書館にたどり着き、そこで自分の出生の秘密に遭遇する。 私の勝手な解釈では、村上春樹のいう図書館は、主人公の記憶、そして人間全ての記憶がひっそりとしまわれた、地球の歴史そのもの。記憶は、個人の死とともに消滅するのではなく、何か別の形となって、時間や空間を超えて、人々が分かちあう。分かち合った人々の心の中に音もなくうずくまる。外にあると同時に、自分の中に存在している。人は皆、図書館を通じて太古の記憶を共有する。個人を超えたひとつの記憶につながっていく。 「ひとつにつながる」、という概念は、仏教に通じていると思う。人は、いや人だけでなく生きとし生けるものは皆、仏になれる。つまり生あるものすべてが「仏」というひとつのものにつながっている。「山川草木悉皆成仏」というのは、最澄の言葉である。 パンゲア超大陸は、人類の祖先が類人猿から分化するずっと前に、既に今のような5大陸に分裂してしまっていた。けれど、その大きな大陸に、今この世に生きとし生けるもの全ての祖先がいたということは、パンゲアこそが、村上春樹の図書館の原型といえるのではないか。すべてが、本当に、物理的に、そしておそらくSpiritualにつながっていた大陸。 インターネットは現代のパンゲアになるのだろうか。
by miltlumi
| 2010-03-08 21:43
| 私は私・徒然なるまま
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