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図書館がこわい。というより、図書館からのメールがこわい。すなわち「図書館資料返却のお願い」という、シンプルかつ冷徹かつ断固たるあの通達。こちらは税務署とちがって明らかに私の側に非があるから、なんとも申し開きのしようがない。
区立図書館の簡便性(ネットでささっと検索して予約してメールが来たら、取りに行く)、奥深さ(一生かかっても読み切れないほどの本に、すべてアクセスできるなんて…)、そして何よりタダであること(住民税の金額を考えると割高な気もするが、月30万円も書籍購入に費やしている友人のことを考えれば、安いもんである。でも彼が買うような専門書は図書館には置いてないんだろうなぁ)の素晴らしさに気づいたのは、遅まきながら6年ほど前である。 新聞の書評で見た本をネット予約することもあれば、書棚をふらつきながら目に留まった本をなんとなく借りることもある。人気の本は30人待ち、なんてこともあるので、忘れた頃に「ご用意できました」のメールが届いたりする。上中下巻の続き物は、つい3冊まとめて借りてしまう。あれこれ借りるうち、全てを貸出期間の2週間で読破できる確証はない。 来るか来ないか予見できない税務署と違って、図書館は厳密である。返却期限を過ぎてきっかり1週間で、必ずこわいメールが飛んでくる。もう読み終わったけど、忙しくて返しに行く時間がないときはまだいい。図書館が閉まっている時間帯でも、階下の守衛さんの隣に置かれたTSUTAYAみたいな返却ボックスにポトンと落とすだけ。 でも先日のハノイ旅行は、確信犯だった。ハンディなガイドブック、18日返却期限なのにわざと返さず、そのまま現地に持って行った。しかも次に予約が1つ入っていることもネット上で確認していた。帰国すると、案の定受信ボックスにメールが。てへへ、と思って返却しに行くと、いつもは穏やかな窓口のお姉さんが戸惑いがちに口を開いた。 「もう1冊、期間を過ぎている本があります。返していただかないとお電話行ってしまいますから」 げげっ。電話なんちゅうコワい手段にまで訴えるんか、図書館は。すっかりおののいた私は、思いっきり可愛っこぶりっこして「ひゃあ、どの本ですか?あ、それね、ごめんなさい、忘れてました。今日何時までやってますかぁ?」と笑ってごまかそうとする(年下女性に媚売ってどないすんねん)。 うちに帰って、改めてメール本文を読むと; 「返却期限から3週間を過ぎると、港区立図書館条例施行規則第10条に基づき、今後図書館資料の館外利用をお断りすることになります。」という最後通牒が突きつけられているではないか。コワい。貸出禁止なんて。前科1犯でいきなりそこまで? そう、図書館メールがこわいのは、誠に便利なこのシステムから遮断される恐れがあるから。税務署のこわさにめげず真面目に払っている住民税のモトをとるまで、図書館だけは出入り禁止にされたくない。本日返却期限の文庫本4冊。ネットで予約延長申請をしなくては。
税務署がこわい。もちろん、脱税しているわけではない。それでも、確定申告が近づくこの時期、サラリーマンを辞めた身としては、余計になんだかそわそわする。おそらくそれは、確定申告の、あの「わからなさ」加減のせいだと思う。
7年前に手術で入院して医療費が10万円を超えたとき、たくさんの領収書をばか丁寧に白い紙に貼りつけて 、EXCELできれいなチャートを作成して、何度も計算をし直して、書類一式持って意気揚々と税務署を訪れた。そしたらなんと、領収書は添付不要だと言われた。 え…、じゃあどうやってこの医療費控除の正当性をチェックするわけ?と思ったが、要らんと言われたものを付けるわけにもいかない。すごすご引き返した。後日、申告通りの税金がめでたく還付された。でもしばらくは、これ、ほんとにもらっちゃっていいのかしら、と不安だった。 そうかと思うと3年前、生命保険と寄付金控除しかないシンプルな確定申告を出して、スズメの涙ほどの還付を無事頂戴してしばらくした後、いきなり税務署から、なんとかいう明細書が添付されていなかったから、速やかに提出せよ、とのお達しが来た。 え…、何それ。インターネットからダウンロードした確定申告フォーマットには影も形もなかった、と思うけど。おそるおそる税務署に電話したら、必要書類とのこと。去年も一昨年も出さなかったのに、何も言われなかったけど。つまりランダムな抜き取り調査ですな。私なんかよりずぅぅぅっと金持ちをいっぱい傘下に抱えた芝税務署では、毎年律儀に調査していては、それこそ税金の無駄遣いなのだ。 それにしても、出すべきものと出さなくていいものがよくわからない。出すべきものを出さないと、ダメなときとダメじゃない時がある。この予見不能性。PCのバグで「再現せず」と言われ、放っておいたら致命傷になるかも、みたいな不気味さがある。 だから、税務署から封書が来ると、反射的にぎくっとしてしまう。最近は全てプロの税理士さんに全てお任せだから、間違うはずはない。けれど、忘れた頃に突然「なんとか申告をしてください」と、これまた見た事のない分厚い書類が送られてくるから、油断できない。 かくして、銀行口座自動引き落としにできる税金は皆そうしている。4回分割払の住民税の用紙は、よく開ける引き出しに入れていつも目に入るようにし、締切10日前をケータイのスケジュールにインプットして、ゼッタイ払い忘れないよう注意する。 去年海外旅行で3週間うちを空けたとき、税理士に「そろそろ税務署からXXの書類が送られてきますから」と言われ、甥っ子にバイト料を払って郵便受けをチェックしてもらった。 今年の確定申告は、投資信託の損失たっぷり。…と思ったら、唯一差益が出た証券会社からの取引報告書がまだ来ていないことを思い出した。セーフ。どうでもいいから、とにかく税務署からお手紙が来ないことだけを願う、私は根っからの小市民である。
FacebookのようなSNSに長時間費やす人ほど不幸を感じる、という研究結果が発表されたらしい。その理由たるや、「他人の楽しげな投稿を見ると『それに比べて自分は…』という気持ちになるから」とか。
やばい。と反射的に思った。つい先日、ブログで「FBは、機嫌いいときだけ機嫌いい投稿をする」と言い放ってしまった私。楽しげな投稿は、読む人も楽しくするだろう、というささやかな期待を抱いていた。それが、相手によってはむしろ不幸感を煽っていたなんて。申し訳ありません。 でも、そもそもFBで楽しげな写真をUPしている人が、みーんなシアワセいっぱい夢いっぱい、なわけないだろうが。少なくとも私の場合は、公の場で暗い話をバラまくなんて「不幸公害の輸出」みたいだからやらないだけ。人並みに悩みだって不安だってあるさ、そりゃ。 ネットでUPされる情報は「生」のその人ではなく、楽しいイベント報告だって悲しい打ち明け話だって、多かれ少なかれ「他人の目」を意識した大本営発表なのだ。そういう判断能力がなくなるほど不幸に打ちひしがれている人にとっては、ネットは確かに凶器になりうる。 しかし、おそらく件の研究が問題にすべきなのは、そんな臨時不幸人ではなく、基本的かつ根本的に、SNSに限らず何をしても何を見ても不幸を感じることのできる、筋金入りのペシミストではないか。「真のペシミストとは、物事を悲観的に見がちな人ではなく、物事は悲観的であるべきだと信じている人のことである」…どこかで読んだ名言。そういう人のことなのだ。 どうしてそういう思考回路になっちゃうのか、普通の人には皆目見当がつかない。どうにか物事のポジティブな面に目を向けてもらおうとしても、ペシミスティックな色眼鏡は、コンタクトレンズどころか眼内レンズよろしく体内にがっしり組み込まれていて、ひっぺがしようがない。 情報が溢れかえるネット、ましてや固有名詞まで特定できるSNS。楽しいニュースも嫌なニュースも、悲観的に受け止めれば世の中不幸に満ちている。結局のところ人は、自分が解釈したいようにしか、情報を解釈しない。 「不幸になりたがる人たち」という興味深い本がある。その結論は、「どういうわけか、外から見ると不幸としか思えない考え方・行動をとり、案の定不幸になってしまう『不幸になりたがる人』が存在する」、ただそれだけ。 いくら新書だからって、もう少しひねりを効かせてくださいよ、と言いたくなる。でも、きっとこの著者も、どうして不幸になりたがる人がいるのか理解できなくて、調べてみたけどやっぱりわからない、ということかもしれない。 生まれて初めて訪れた、買い物天国・グルメ天国の(はずの)ハノイは、ぴったしカンカン(あ、古い…)旧正月の三が日にぶち当たり、閑散としていた。バイクが少なくて静かだとか獅子舞が見られたとか店が少ない分品物を選ぶのが楽だとか、連れと競ってプラス点を挙げては笑いあった。 旅のブログは、わざと楽しげに演出しているので、それを見て不幸を感じないでください。あるいは、真のペシミストは、ただの負け惜しみと見ているかも。
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