久しく使っていなかったクレジットカードの暗証番号がわからなくなった。この手のカードの4桁は、たいがいアレかアレなのだが、お店で試したところ、両方ともハズレ。仕方なく、ネットで「暗証番号のお知らせ通知」を申し込んだ。 数日後に届いたラミネート製のハガキをぺらりとめくり、そこに並んだ4つの数字を見て、はぁ~、というか、ぁはは、というか、笑いともため息ともつかない声が漏れ、なんか脱力した。
…昔つきあっていた、元カレの誕生日、であった。
大学時代に初めて銀行口座を開いたとき、キャッシュカードの暗証番号は住所や誕生日などにしないでください、と言われ、迷わずつきあっていた相手の誕生日に設定した。ハタチそこそこのお子ちゃまだった私は、当時は真剣にその人と結婚するぞと考えていた。しかし、思えば恋に恋してたお年頃。学生時代の恋は儚い。ご多聞に漏れず、数年後に破局。別れた後、ATMでお金をおろすたびにほろ苦い思い出がよみがえり、結局別の銀行に口座を開いたのだった。 以来、クレジットカードの暗証番号には注意していたのだ。結婚していた頃も、ダンナの誕生日がたまたま私と1日ちがいだったせいで、暗証番号への利用は避けた(おかげで離婚後、大学時代の憂き目を繰り返さずに済んだ。あはは)。
なのに。件のクレジットカードを作った頃、その元カレと別れる、という将来を描いていなかったとは、なんて能天気だったんだろう。いい歳して、恋に恋してたのかしらん。うーん。たしかに。今振り返ってみると、なんだかオママゴトみたいな恋だったかも。ここに詳細を記すことは控えさせていただくが、まぁ、そういうことだったのだ。
同世代の女友達とおしゃべりしていて、最近何を断捨離したか、という話題になった。 -大学時代のノートは、そろそろ捨てようと思ってる。 -丈の短いタイトスカートは、さすがにもう着ないよね。 -旅行の写真も、同じような風景は不要、人物写真2・3枚で十分。 整理整頓好きな私にとっては、そんなのとっくの昔に済ましたもんね、というシロモノばかりである。ところが、聞いてびっくりしたモノがある。 -日記帳は、かなり昔に捨てた。 -えっ!? 日記帳、捨てちゃったの? それこそ、当時つきあっていた人のこととか書いてあって、きゃあ、ハズカシイ、というわけで、ばっさり、だそうだ。 繰り返すが、整理整頓好きな私は、小学2年から断続的につけてきた日記帳は①から全部ナンバリングして、無印良品の引き出し式収納ケースに並べてある。でも冷静に考えれば、私はどうして日記を捨てずに置いているのだろう。「なんとなく捨てずにとってある」というなし崩し派でもないし、「老後ヒマになったら見返して、当時を懐かしもう」という積極活用派でもない。 おそらくは、自分の脳みその外部メモリーなのだ。今でさえ、ふとしたときに読み返すと「げげっ、こんなことあったっけ!?」というようなことが書いてあって、自分の記憶力の不確かさに驚かされる。あと10年もしたら、他人の青春物語みたいに新鮮な気持ちで読めるかも…、という気もする。 クレジットカードの暗証番号だって、4ケタの数字を見ても、「何の数字だろう…」と首をひねって終わり、という日も遠くないかもしれない。
忘却の彼方にかすんでいた記憶が、不意打ちで蘇るなら、まだいい。 断捨離してしまったら、二度と思い出せないかもしれない記憶。 やはり日記は、とって置こうと思う。 #
by miltlumi
| 2024-02-21 15:55
| 機嫌よく一人暮らし
|
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久しく使っていなかったクレジットカードの暗証番号がわからなくなった。この手のカードの4桁は、たいがいアレかアレなのだが、お店で試したところ、両方ともハズレ。仕方なく、ネットで「暗証番号のお知らせ通知」を申し込んだ。 数日後に届いたラミネート製のハガキをぺらりとめくり、そこに並んだ4つの数字を見て、はぁ~、というか、ぁはは、というか、笑いともため息ともつかない声が漏れ、なんか脱力した。
…昔つきあっていた、元カレの誕生日、であった。
大学時代に初めて銀行口座を開いたとき、キャッシュカードの暗証番号は住所や誕生日などにしないでください、と言われ、迷わずつきあっていた相手の誕生日に設定した。ハタチそこそこのお子ちゃまだった私は、当時は真剣にその人と結婚するぞと考えていた。しかし、思えば恋に恋してたお年頃。学生時代の恋は儚い。ご多聞に漏れず、数年後に破局。別れた後、ATMでお金をおろすたびにほろ苦い思い出がよみがえり、結局別の銀行に口座を開いたのだった。 以来、クレジットカードの暗証番号には注意していたのだ。結婚していた頃も、ダンナの誕生日がたまたま私と1日ちがいだったせいで、暗証番号への利用は避けた(おかげで離婚後、大学時代の憂き目を繰り返さずに済んだ。あはは)。
なのに。件のクレジットカードを作った頃、その元カレと別れる、という将来を描いていなかったとは、なんて能天気だったんだろう。いい歳して、恋に恋してたのかしらん。うーん。たしかに。今振り返ってみると、なんだかオママゴトみたいな恋だったかも。ここに詳細を記すことは控えさせていただくが、まぁ、そういうことだったのだ。
同世代の女友達とおしゃべりしていて、最近何を断捨離したか、という話題になった。 -大学時代のノートは、そろそろ捨てようと思ってる。 -丈の短いタイトスカートは、さすがにもう着ないよね。 -旅行の写真も、同じような風景は不要、人物写真2・3枚で十分。 整理整頓好きな私にとっては、そんなのとっくの昔に済ましたもんね、というシロモノばかりである。ところが、聞いてびっくりしたモノがある。 -日記帳は、かなり昔に捨てた。 -えっ!? 日記帳、捨てちゃったの? それこそ、当時つきあっていた人のこととか書いてあって、きゃあ、ハズカシイ、というわけで、ばっさり、だそうだ。 繰り返すが、整理整頓好きな私は、小学2年から断続的につけてきた日記帳は①から全部ナンバリングして、無印良品の引き出し式収納ケースに並べてある。でも冷静に考えれば、私はどうして日記を捨てずに置いているのだろう。「なんとなく捨てずにとってある」というなし崩し派でもないし、「老後ヒマになったら見返して、当時を懐かしもう」という積極活用派でもない。 おそらくは、自分の脳みその外部メモリーなのだ。今でさえ、ふとしたときに読み返すと「げげっ、こんなことあったっけ!?」というようなことが書いてあって、自分の記憶力の不確かさに驚かされる。あと10年もしたら、他人の青春物語みたいに新鮮な気持ちで読めるかも…、という気もする。 クレジットカードの暗証番号だって、4ケタの数字を見ても、「何の数字だろう…」と首をひねって終わり、という日も遠くないかもしれない。
忘却の彼方にかすんでいた記憶が、不意打ちで蘇るなら、まだいい。 断捨離してしまったら、二度と思い出せないかもしれない記憶。 やはり日記は、とって置こうと思う。 #
by miltlumi
| 2024-02-21 15:55
| 機嫌よく一人暮らし
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近頃、仕事やプライベートで知り合った20代~30代の人と食事をする機会が増えている。話をしていると(…というよりも、話題の提供者はもっぱら彼らのほうで、私はそれにちゃちゃを入れるだけだが…)、大河ドラマを見ている気分になる。 大学を卒業して生まれて初めての一人暮らしです。婚活やってみました。彼氏と別れるかどうか迷ってます。ついに結婚しました。妊活頑張ってます。パパになりました。転職しました。マンション買いました。…etc. 様々な人が、こういうドラマティックなテーマを鋭意体験中なのである。前回会ったときから、必ず何かしら進展がある。半年も会わないと、その間で起承転結が1・2回まわっている。連続ドラマの早送りを見ているようである。
大河ドラマの主人公を素で行く彼らに比べると、私の人生のなんと平穏なことか。安定していると言えば聞こえはいいが、つまりUneventful。長大な大河ドラマどころか、せいぜい短編集(しかも主人公がいつも同じのエッセイ風ワンパターン)、なんならオチのない4コマ漫画の羅列だ。 そういえば、何年前だっただろうか。あるとき、「人生って、大河ドラマみたいなものだと思ってたのに…」と呆然とした記憶がある。 海外赴任して異国の地で初めて一人暮らしして、遠距離恋愛の末の結婚して、マイホーム建てて、離婚して、マイホーム売ってマンション買って、転職して独立。そして、何度かのオトナの恋愛…。 気づけば、今のマンションが人生の中で最長の住処となり、独立で働く時間が新卒入社の会社での勤務年月に迫りつつある。ささやかながら居心地の良い自分だけの空間からもっと広いマンションに移りたいとは思わないし、仕事も今さらゼロベースのリスキルでガラリと変えることはあり得ない。
現状維持を打破するため、「Make drama」(このイミがわかるのは同世代(笑) わからない人は、ここクリックしてね)のネタを探さなきゃ、というのは、その発想自体が本末転倒だ。日々の人生が自然とドラマになっている20~30代とは、根本的に異なっている。 海外旅行に行きたくても、コロナ禍のせいで足止めをくらううち、旅行する元気や勇気が徐々に干からびてくる。新しい仕事を開拓しようとしても、いつもの仕事でさえ記憶力や集中力の低下に苛まれる今日この頃、人様に迷惑をかけないためには、むしろ何もしないほうがいいのではないか、と思ってしまう。 逡巡した挙句、平穏な人生を平穏に受け入れる技を、編み出した。 「平穏でいいんだろうか」 「毎日同じことの繰り返しでいいんだろうか」 …という不安が生じたら、お気に入りの三井寺の如意輪観音様を思い浮かべて、観音様に「大丈夫」とささやいてもらうのである。朝、歯を磨きながら、窓辺のサンキャッチャーが創り出す七色スペクトラムと一緒に、観音様が平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩像さながらにぷかぷか弾んでいる様子を想像する。気持ちが和やかになり、大丈夫、と思えてくる。 自分自身、昔のようなドラマティックな成長はない。けれど、大河ドラマ真っ最中の人たちと新たに知り合い、彼らの成長に寄り添うことが、自分の人生にとっての大きな財産だと思う。財産が増えていくのも、ひとつの成長の在り方かもしれない。 #
by miltlumi
| 2023-11-21 10:39
| 私は私・徒然なるまま
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